「タラブックス」を読んで

以前このブログで「夜の木」を取り上げたようにタラブックスの絵本のファンである私はユニテの本棚に何冊かの
タラブックスの本を並べていますが、どれもお気に入りです。
なぜタラブックスの本が特別なのかというと、しっかり人が作ったんだなぁという足跡が感じられるからです。
 ページをめくるとまず独特のインクのにおい。この1ページを作るのに、1番最初にすることは紙をすくこと。そうタラブックスの手作り本はまず全ページに使う紙を作ることから始まります、あの独特の手触りの紙はやはり人間の手で一枚づつ作ることから始まります。そして次は印刷、これももちろん人間による作業です。木枠でつくったシルクスクリーンに絵具を塗ってプレス、しばらく乾かしてから、また違う色の絵具をシルクスクリーンに塗りプレスという作業を色の数だけ繰り返してやっと1ページができるのです、それも全部手作業というのですから何だか気が遠くなってきます。そして全ページの印刷が終わると次は製本作業1ページづつ手作業で綴じていきます。こうしてタラブックスのあの美しい絵本が出来上がるのです。
 今までの日本(現在もそうですが)は何より効率を一番に優先してきました。いかに早く優秀な製品を作って利益をあげるか、そうして会社を大きくしていくかが重要視されていました。そのうえに現在は安くなければ売れないということで安売り競争に巻き込まれてコスト削減、サービス残業で長時間労働。そんなに働いても給料は上がっていかないし、いつ雇止めやリストラされるかわからい不安のなかで社員も国民全体も疲れ切っているのが日本の現状ではないでしょうか?
 タラブックスの経営陣はこれ以上、会社が大きくなる必要はないという考えです。
今雇っている従業員にインドとしては必要充分な賃金を出し、必要とあらば食事、寝るところも補償し、会社がある限りは雇用も継続する、そして今までのペースで仕事をするということが何より大事で良いものを作れる唯一の方法だと確信されているようです。
 本の業界は日本でも斜陽産業のように昨今では言われています。確かに本は売れなくなっていますし、地方の本屋さんもどんどん無くなっていってます。でも日本は今までのやり方を変えようとはせず、大量出版、大量廃棄の繰り返しで人々は忙しく働いてるのに結局何も残らずおまけに流通の複雑さがより多くの無駄を生み出しています。電子書籍の台頭やスマホの普及による情報の氾濫で「紙の本」の未来は大変危ぶまれますが、ひとつの答えがこのタラブックスの本作りにあると私は思っています。実用的な部分は電子書籍にとってかわられるとして将来「紙の本」はより趣味的にならざるえないし、そこにこそ勝機は有ると思います。
 だれもが手元に置いておきたい、そして心が豊かになる本、丁寧に人間の手で作られた本、これは電子書籍では絶対に得られない喜びです。タラブックスの原始的とも思える手法が実は最先端なのです。
 タラブックスの経営の仕方を読んでいて、ひとつ日本にも似たような考え方の経営が身近にあるのに気づきました。京都の老舗の経営は何十年、中には何百年も続いておられるところもありますが、どこも規模は、そんなに大きくありません。もちろん有名なブランドですから、全国から引く手あまたのお誘いはあるでしょうが、いたずらに手を広げたり、規模を大きくすることもなく現在に至っています。
 やはりモノづくりで大切なのは、品質を維持すること、そして従業員が安心して勤め続けられること、この大切さを長年の経験から知っておられるのでしょう。そしてブランドは続いていくのです。
 よって本だけではなく日本のモノづくり全体に言えることですが、決して安売り競争に巻き込まれてはいけません。そこには日本という国、そして国民の疲弊が待っているだけです。20170810154051.jpg